はじめに
2023年12月22日、金融庁は、有価証券報告書および有価証券届出書ならびに臨時報告書において開示すべき「重要な契約」の類型やその開示内容を具体的に明らかにする「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正(以下「本改正」)を公表しました。本改正は同日付で公布されており、2024年4月1日から施行されます。重要な契約の開示に関する改正規定は2025年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等、同年4月1日以後に提出される臨時報告書から適用されます。
本改正の公布と同時に、意見募集に対して寄せられたコメントの概要とこれに対する金融庁の考え方(以下「考え方」)も同時に公表されており、本改正に関する金融庁の見解を理解する上で参考となります。
1 中国を取り巻く環境の変化
一昔前までの中国は、世界の工場として、世界中 の生産性企業がその安価な労働力を求めて進出して いたが、中国の経済成長に伴い労働コストが増加し た結果、中国国内のより安価な地域や東南アジア等 の第三国に生産拠点を移したり、中国国内の事業を 整理・統合したりするなどの動きが出てきている。
近時、中国経済の先行きが不透明であることから、 中国子会社の再編・撤退を考えている企業も少なか らずあるのではないかと思われる。そこで今回から 複数回に分けて「中国子会社の再編・撤退」と題し て、中国子会社の再編・撤退にはどのような方法が あるのか、それぞれの方法の手続はどうすればよい のか、またどのような点に気を付ける必要があるの か等についてご紹介することとしたい。
2 選択肢は現状維持か撤退かだけではない
日本本社が中国子会社の業績を判断する場合、中 国子会社の事業全体をひとくくりにして見ることが 多いのではないかと思われる。すなわち中国子会社 が最終的に赤字であり改善の見込みがなければ撤退、 黒字であるもしくは赤字幅が少なく改善の見込みが あるということであれば現状維持という判断になる 傾向にあると思われる。
【東京地判令和5年3月27日(令和4年(ワ)18610号 商標権に基づく差止請求権不存在確認請求事件)】
【キーワード】
商標権、商標権侵害、実質的違法性、並行輸入、不存在確認請求、破産管財人
【事案の概要】
オンキヨーホームエンターテイメント株式会社(以下、「破産会社」又は「オンキヨー」という。)の破産管財人(以下、「本破産管財人」という場合がある。)が、パイオニア株式会(以下、「被告」という場合がある。)が保有する商標権が付され、香港にある倉庫に保有しているスピーカー等の在庫品(以下、「本件在庫商品」という。)を処分しようと、パイオニアに対し、商標権に基づく差止請求権不存在確認請求訴訟を提起した事案である。 結論としては、本破産管財人が敗訴した。このため、本破産管財人は本件在庫商品を処分(販売)することができず、破産財団の増殖を図ることができなかったと言える。
(※判旨及び本破産管財人のウェブサイトに基づき作成)
1. 始めに
JV(ジョイントベンチャー)は、自社の持たないノウハウ・経営資源等を JV パートナー間が JV を通じて相互に提供することで新たな価値を創出すると共に、リスクを適切に分担することに存在意義の 1 つがある。しかしながら、①一旦、JV パートナー間の関係が悪化すると、デッドロックや契約違反が生じ、円滑なビジネス運営に支障をきたし、また、②JV(対象会社)の財務状況が悪化すると、当該損失の処理を巡っ て、JV パートナー間で軋轢が発生することがある。
そこで、本稿では、そのような JV の処理を巡る問題を概観することとする。
2. 契約上の攻防
まず、JV パートナー間の関係が悪化した場合に備えて、通常は JV 契約において、①JV 関係の解消方法に関する条項、及び②紛争解決手段に関する条項が記載されていることが多いため、当該条項に従って処理を 行うことが想定される 。
1. はじめに
令和4年 4月に中小企業の事業再生等に関するガイドライ ン(中小版GL)の運用が開始されてから、1年半が経過しまし た1。中小版GLに基づく計画策定にあたっては、中小企業活 性化協議会における経営改善計画策定支援事業(405事 業)において、DD費用、計画策定支援費用、伴走支援費用 の3分の2(上限あり)の補助を受けることができます。かかる 補助金との関係では、中小企業庁及び独立行政法人中小企 業基盤整備機構(中小企業活性化全国本部)が「経営改善 計画策定支援事業(ガイドラインに基づく計画策定等の支援 <中小版GL枠>)マニュアル・FAQ」(本マニュアル)を公表し ておりますので、本稿では、中小版GLを利用した廃業型私 的整理手続との関係で、特に留意すべき点をご説明いたしま す。なお、本マニュアルは、今後、改訂・変更される可能性があ りますのでご留意ください。
2. 対象となる事業者について
私は、当事務所にて事務職員として勤務していますが、前職 は大阪地方裁判所の裁判所書記官として、裁判所での倒産 事務に携わっておりました。現在も当事務所の倒産事件につ き弁護士をサポートしていますので、元書記官の視点から、今 回は、前回に引き続き、債権届出書の記載事項のうち、届出 債権の特定についてお話いたします。
第1 事案の概要
X(原告)は、協同組合であるY(被告)の組合員であったとこ ろ、令和2年1月に民事再生手続開始の決定を受け(以下「本 件再生手続」といいます。)、同年9月にYを脱退する旨の意思 表示をしました。
本件は、Xが、Yに対し、XのYに対する出資金501万円に係る 返戻請求権(以下「本件出資金返戻請求権」といいます。) は、脱退の効力が発生する令和3年3月末の事業年度の終了 日において組合財産が存在することが同年6月のYの総代会 において確認されたことにより停止条件が成就した旨を主張 して、本件出資金返戻請求権に基づき、出資金501万円及び これに対する遅延損害金の支払を求めた事案です。
再生債権者であるYが本件出資金返戻請求権の停止条件 不成就の利益を放棄して行った、再生債権(YのXに対する貸 付金残元金の債権1,008万4,057円及びこれに対する遅延 損害金)を自働債権とし、本件出資金返戻請求権を受働債権 とする相殺(以下「本件相殺」といいます。)が、民事再生法92 条1項によって許容されるか否か等が争われました。
第2 本件の争点と判断概要
1 争点
はじめに
コロナ禍によって事業や財政状態が毀損した企業の再生が課題となる近時、実質的に債務超過状態にある上場会社をスポンサーが完全子会社化する(つまり既存株主の保有する株式を全てスポンサーが取得する)ことで、その経営再建を図る事例が増加しつつある。
こうした事例では、事業再生ADR手続等の準則型私的整理手続を通じた金融債権者(金融機関)を対象とする債務リストラクチャリング(債務免除による金融支援)によって過剰債務を解消するとともに、スポンサー支援を通じて資本を拡充し手元資金を確保した上で、対象会社の上場を廃止してスポンサーの完全子会社となり抜本的な再建プロセスが講じられることになる。
1. 本決定の概要
本件は、当事務所が代理し、民事再生法に基づく再生手続が東京地方裁判所に係属している再生債務者が中国の上海市に相応の資産を有していたことから、同資産の保全を図るべく、中国の裁判所(上海市第三中級人民法院)に対して、東京地方裁判所による再生手続開始決定及び監督命令を承認するよう申し立てた事案です。上海市第三中級人民法院は、弁論期日を開催して関連当事者の意見を聴取し、中国国内の知れたる債権者に対して異議申立機会を提供し、かつ、中国国内で公告を行った上で、2023年9月26日に、再生手続開始決定及び監督命令を承認する旨、ただし、債権者の利益に重大な影響を及ぼす再生債務者の中国国内における財産処分行為については別途人民法院による許可を要する旨の決定(以下「本決定」といいます。)を下しました。
Hajime Ueno, Masaru Shibahara and Kotaro Fuji, Nishimura & Asahi
This is an extract from the 2024 edition of GRR's The Asia-Pacific Restructuring Review. The whole publication is available here.
This is an Insight article, written by a selected partner as part of GRR's co-published content. Read more on Insight