1 破産免責の手続
個人破産の手続においては、破産手続の開始の申立てが ある場合、免責許可の申立てもするのが通常である。免責制 度は、破産手続による配当を受けることができなかった債務 について責任を免れさせることによって破産者の経済的再生 を図る制度であり、積極的に不誠実な行為をした者でない限 り、破産者の経済的再生を付与するために免責を与えるべき との考え方が有力であり、破産管財人は、このような考え方に 基づき免責調査を行い、免責不許可事由が存在する場合、 裁判所に対してその旨の意見書を提出しており、東京地方 裁判所民事第20部(破産再生部)においても、免責不許可 事由に該当する事実があっても、その不誠実さの程度が著し い事例を除き、免責許可をしているのが通常である(破産・民 事再生の実務・破産編(第4版)595頁)。
1 はじめに
破産手続が開始されると、当該事実は官報に公告されると ともに、知れている破産債権者に対して個別に通知されます (破産法32条1項、32条3項)。この知れている破産債権者へ の通知を行う主体は本来、破産裁判所ですが、実務では、破 産管財人が、申立代理人から提出された債権者一覧表に記 載のある破産債権者に対して通知書を送付することによりな されています(破産規則7条参照)。では、実際には債権を もっているにもかかわらず、債権者一覧表に記載がなかったがために通知を受けなかった債権者はどうなるのでしょうか? 本件は、通知を受けなかったために破産手続の存在を知ら なかった債権者が、破産手続に参加したとすれば得られたは ずの配当金を損害として、申立代理人及び破産管財人を訴 えたという事案です。
2 事案の概要
事案の概要は、以下のとおりです。
1 はじめに
中国に現地法人を有する日系企業が中国からの撤退を考 える場合、大きく分けて、第三者に対する持分譲渡、清算及 び破産の3つの方法があります。買主が見つかれば、持分譲 渡手続が最も迅速かつ簡便ですが、買主が見つからない場 合には、清算か破産を選択することになります。以前は外資 の中国子会社が破産を申し立てたとしてもなかなか受理され なかったのですが、現在では認められるようになり、破産も選 択肢の一つとなっています。本稿では清算と破産に関する法 制度と現状をご紹介したいと思います。
2 清算か破産かの判断基準
中国子会社の資産が負債よりも多く、すべての債務を支払う ことができる場合には清算手続が可能です。他方で債務超 過になっている場合には、破産手続によることになります。た だし、BS上の資産が負債より多い場合であっても、実際には 資産価値が毀損している場合があるため、清算が可能かどう か予めシミュレーションしておく必要があります。
3 清算手続の概要
中国における清算手続の流れは以下の通りです。
I. Introduction
連載の4回目(最後)の今回は近時の会社更生の動向等を 紹介したいと思います1 。
1 近年の会社更生の利用状況
会社更生手続は、裁判所により選任される管財人の下、会社 の事業再建を図る手続です。旧会社更生法は1952年に制定 され、その後、1967年、2002年等の改正を経て、現在の会社更 生法に至っています
かつては、会社更生は大会社向けの重厚な手続、民事再生 は中小企業向けの簡易時速な手続、といった切り分けのイメー ジもありましたが、負債総額1兆円を超える案件(リーマンブラ ザーズ日本法人やタカタ等)でも民事再生が活用されることがある一方、小規模会社の会社更生の申立の割合が増加してい る2 ことなどからすると、かつての会社更生=大会社、民事再生 =中小企業 というイメージは当てはまらなくなっており、事案 に適した手続選択がなされています。
会社更生は、長年にわたって、窮境に陥った株式会社の事 業再生に活用されてきましたが、下表のとおり、この10年弱の 間、利用件数が低迷しており、特に平成25年以降は実質的な 案件数で5件以内(全国)という状況が続いています
1.はじめに
保険契約は、何十年間、場合によっては終身期間の契約と なっているものもあります。保険事業者(保険会社を含みます。 以下同様です。)は、契約者保護の観点から、法令により、財 務の健全性を保つことが義務付けられていますが、それでも なお、長期の契約期間中に経済が大きく変動し、経営状態の 良かった保険事業者でも倒産する可能性があります。
1990年代から2000年代にかけて、保険会社の倒産事例が いくつか発生した後は、日本において保険事業者が倒産する ことはしばらくありませんでしたが、2020年に東京地方裁判所 で保険事業者の民事再生の事案が発生しており、今後も保険 事業者の倒産事案が発生する可能性があります。
以下では、保険事業者が倒産した場合を中心に、倒産手続 における保険契約1 の取扱いを解説いたします。
2.保険事業者が倒産した場合
(1) 各倒産手続での共通事項
With the tapering of pandemic restrictions, businesses around the world are looking to settle into the new normal. It is a time of optimism but also some lingering uncertainty. Some businesses have survived through cost-cutting and downsizing of employees and may need time to recover. In some cases, the pandemic has ignited the momentum for digital transformation and has been a catalyst for business innovation. “Work from home” became widespread during the pandemic and changed the way many businesses and employees view the workplace.
1 はじめに
危機時期にある会社が、その事業の全部または一部を別 の法人に移して、事業の存続を図るという手法は、第二会社 方式など呼ばれ、事業再生の手法の一つとして知られるとこ ろです。当然ながら、このような危機時期における事業承継 は債権者を害するものではあってはならず、不当な事業承継 がなされた場合には、後の破産手続において当該事業承継 が否認されたり、いわゆる法人格否認の法理により旧会社の 債権者から新会社に対する請求が認められたりする可能性 があります。本稿では、破産の危機にあった旧会社の貸金返 還債務について、法人格否認の法理を適用し、新会社の支 払義務を認めた東京地方裁判所・令和3年2月12日判決(金 融法務事情2168号・72頁)をご紹介したうえで、危機時期に ある会社による事業承継についての留意点を検討したいと思 います。
2 東京地方裁判所・令和3年2月12日判決
(1) 事案の概要
第1 はじめに
事業再構築補助金の第4回公募が開始されました。本補助 金は、新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、又は事 業再編という思い切った事業再構築に意欲を有する中小企 業等の挑戦を支援するものであり、通常枠では8000万円を上 限として、企業の投資金額の最大2/3を補助するものです。
現時点で予定されているのは、公募を開始したばかりの第4 回公募及び来年初旬に予定されている第5回公募のみであ り、また、回を重ねる毎に申請数も増加しているため、機会を 逃さないよう、制度の概要を紹介いたします。
第2 専用サイト
事業再構築補助金については、中小企業庁が専用サイトを 公開しています(https://jigyou-saikouchiku.go.jp/#c1)。制 度説明、採択事例紹介、申請手続等が網羅されていますの で、御参照ください。
第3 概要
事業再構築補助金制度の概要は以下のとおりです。
第1 はじめに
御存じのとおり、債権者は、確定判決等の債務名義を取得し た後、債務者に対して、債務者が第三者に対して有する債権 を差し押えることができます。もっとも、債務者が第三者に対し て有する債権のうち、一部の債権についてはこれを差し押さ えることが禁止されています。どのような場合に、差押えが禁 止されているか事前に理解しておくことで、有事の際に適切な 判断・対応が可能となります。
そこで、本稿では、自然災害義援金に係る差押禁止に関する 法律が制定・施行されたことを受け、その概要・背景等をご紹 介させていただきます。
第2 差押禁止債権の制度
1 差押禁止債権とは
債権執行手続においては、債務者及びその家族の生活保 障等の社会政策的配慮その他の目的から差押えが禁止され る債権があります。これを差押禁止債権といい、大きく分ける と、①民事執行法上差押えが禁止されている債権(給料債権 など。民事執行法第152条)、②特別法上差押えが禁止されて いる債権、③権利の性質上差押えができない債権に分類す ることができます1 。