1 はじめに
令和4年3月4日、中小企業の事業再生等に関する研究会 より「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」(以下「中 小企業版私的整理ガイドライン」といいます。)が公表されま した。本ガイドラインは、経済産業省、金融庁及び財務省から 発表された「中小企業活性化パッケージ」のうち、中小企業 の事業再生等のためのガイドラインを定めるもので、とりわ け、第三部については、中小企業の事業再生等に焦点を当 てた新たな準則型私的整理手続を選択肢として提供するも のであり、実務的に注目されています。
Japan Inc has embarked upon the overdue process of unbundling its conglomerate structures. Businesses that are being put up for sale include distressed oversees operations, particularly in the automotive sector. Managing the businesses while they are in distress, preparing them for sale, and eventually selling them, comes with a variety of legal and practical complications. The legal landscape will vary by jurisdiction, but the following aspects generally need to be considered in some shape or form regardless of the applicable law.
近時の医療法人を取り巻く環境は厳しいものといえます。診療報酬のマイナス改定や診療報酬に 転嫁することのできない消費税の増税、医療法改正による監査制度の変更に伴う監査コスト増など 従来からの要因に加え、新型コロナウィルス拡大による影響(感染症対策のコスト増、診療時間の制 約・新規外来患者の受付停止に伴う収入減等)が決定打となり窮境に陥る医療法人も少なくありま せん。医療法人が経営破綻に陥ったり、廃業することになると、当該医療法人や債権者は勿論、通 院・入院する患者に大きな不利益が及んでしまい、地域医療の重要な担い手を失うことにも繋がり かねません。したがって経営難に陥った医療法人を再建することは社会的なニーズも強く、昨今の 外部環境の厳しさに応じて今後も医療法人の再建を図る事案が増えていくものと予想されます。 こうした状況を受け、本ニュースレターでは医療法人の経営再建及びその主要な手法の 1 つで ある M&A につき、医療法人特有の事情に焦点を当てながらその留意点について解説するとともに、 各再建手続及び再建計画策定時の留意点についても解説していきます。
第1 はじめに
事業再生型の民事再生手続において、再生手続実施者と 再生債権者との再生計画案の賛成議決権行使の合意に向 けた活動が行われます。特に、従前の取引先との関係を維 持しながら、再生債務者の事業を立て直す方法による再建 計画の場合には、再生計画案の認可確定がなければ、全て の事業再生計画が頓挫してしまいます。その意味では、再生 手続実施者にとっては、再生計画案の賛成議決権行使の合 意に向けた行動は、これを否定すべきものではなく、再生債 務者の事業再生を現実に実現するために必要不可欠である 場合もあります。このことは、DIP型であるか管理型を問わ ず、大変重要な問題となります。
第2 再生手続における「賛成議決権行使和解契 約」についての問題提起
この問題をテーマとして扱う理由は、「賛成議決権行使和 解」の意味が注目されるに至ったことによります。この契機と なったのが最高裁令和3年12月22日決定〔本決定〕です。本 決定の内容と意義については、秋田弁護士が2022年4月の Newsletter(下記のURL)で報告〔以下、〔秋田報告〕といいま す〕しています。
1 仙台高裁令和2年10月13日決定のご紹介(破産手 続開始申立てが不当な目的によるものとして棄却され た事例)
(1) 当事者・本件抗告
相手方Y(債務者)は平成23年11月頃から勤務医師として働 いており、抗告人Xは令和元年9月26日にYと離婚した元妻で す。Yは、令和2年2月に支払を停止し、令和2年6月2日に本件 の破産手続開始の申立てを行いました。原審(福島地方裁判 所相馬支部)が、令和2年7月27日、Yについて破産手続を開 始する旨の決定(原決定)をしたのに対し、Xは、原決定を不服 として、原決定の取消し及びYの破産手続開始の申立ての棄 却を求めて即時抗告(本件抗告)しました。
Xは、離婚に伴う財産分与として、現住所のマンションの所有 権をYから譲り受けたところ、同マンションには住宅ローンの抵 当権が設定されており、財産分与後もYが債務者として同ロー ンの支払を継続することが離婚協議書により合意されていま した。もっとも、Yが破産すると、マンションに設定された抵当権 が実行され、XはYに対し、上記合意の債務不履行に基づく 損害賠償請求権(破産債権)を有することとなります。
第1 はじめに
強制執行とは、主に、民事裁判で確定された権利を実現す るため、民事執行法に基づく手続のことです。強制執行といっ ても、債権者が有する権利の内容に応じて、様々な方法が用 意されており、大別すると、金銭の支払を目的とする権利のた めの手続(金銭執行)と、金銭の支払を目的としない権利のた めの手続(非金銭執行)に分けることができます。金銭の支払 を目的とする権利としては、例えば、貸金返還請求権がありま すが、交通事故でケガをしたとして、加害者に治療費などを求 める損害賠償請求権も、これに該当します。他方で、金銭の支 払を目的としない権利としては、例えば、契約に基づき家具の 製造を求める権利などがあり得ます
企業法務では、一般に、金銭の支払を求める権利の実現 (債権回収)が問題となるため、本稿では、強制執行のうち、金 銭執行に焦点を当てて、簡単な解説をさせていただきます。
第2 金銭執行の準備
1 債務名義と執行文
コロナ禍において、債務残高が増加し、債務の過剰感を感じる企業も増える中、2021 年 6 月 に政府の「成長戦略実行計画」が閣議決定され、同計画で、事業再構築・事業再生の環境整 備のため、中小企業の実態を踏まえた事業再生のための私的整理等のガイドラインの策定を検 討することが示されました。これを受け、「中小企業の事業再生等に関する研究会」が発足し、 同研究会より、2022 年 3 月 4 日に「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」(以下「本ガ イドライン」)が公表されました。その後、実務上留意すべきポイントをまとめた Q&A も公表され、 2022 年 4 月 15 日から本ガイドラインの適用が開始されています。
本ニュースレターでは、本ガイドラインが定める中小企業向けの新たな準則型私的整理手続 の概要について、再生型私的整理手続を中心にご説明します。
1 はじめに
(1) 本稿の目的
会社法は、債権者に、一定の条件のもと、債務者会社の株 主名簿(会社法125条2項3項、以下注記なき条文は会社 法)、取締役会議事録(371条4項)、株主総会議事録(318条 4項)、計算書類等(442条3項)の閲覧を請求できる権利を認 めている。もっとも、債権管理あるいは事業再生の文脈で、会 社法で認められたこれらの権利が活用されることは、筆者が 知る限り、あまり多くないのではないかと思われる。
本稿では、債権管理の局面において、情報不足になりがち な債権者に与えられたツールとして、会社法上の情報開示 請求権を有効活用しうる場面があり得るのではないか、との 指摘をすることを試みたい。
(2) 考察の背景
会社法が上記の各請求権を認めたのは、債務者の業務や 財産に関する一定の調査を行うことを可能として、債権者が 実効的な権利行使をできるよう配慮した趣旨と解される。債 権管理・事業再生の場面は、まさに債権者の実効的な権利 行使が問題となる局面といえる。にもかかわらず、この請求権 が参照される機会が少ないのはなぜか。
第1 はじめに
民事再生手続は、これまでの債務の支払を一旦停止した 上で、債務の圧縮(債務の一部の免責)を含む新たな支払計 画(再生計画)を立て、これについて債権者の賛同を得た上 でその計画に従った弁済をすることで、債務超過等の状況に ある債務者が事業の再生を図る手続です。再生債務者にお いて実現可能な内容であり、かつ再生債権者にとっても納得 のいく内容の再生計画を立てることが肝であって、そうした再 生計画案について再生債権者により可決されること及び裁判 所の認可決定を得ることが最も重要な課題の一つといえま す。
第2 再生計画が不認可となる場合
1 はじめに
法人が破産した場合、破産手続の終結に伴い、基本的に は法人格が消滅することになります。その結果、債務の負担 主体が消滅するため、債権も全て消滅することになります。こ れに対し、自然人(個人)が破産した場合、当然のことです が、破産手続が終結してもその自然人が消滅することはあり ません(そんなことになれば大変です。)。そうした場合に、配 当を得られなかった破産債権はどうなるのでしょうか。皆様の 中には、債務が「チャラ」になるというお話を聞かれたことがあ る方もおられるかもしれません。それはある意味的を射ていま すが、法的には少々不正確です。