第1 はじめに
国際契約を中心に、契約書に仲裁条項が設けられることは 珍しくありません。仲裁条項のある契約について紛争が生じた 場合、裁判所ではなく合意された仲裁機関での紛争解決が 試みられます。では、このような仲裁条項のある契約について、 一方当事者が倒産した場合、仲裁条項は引き続き有効でしょ うか。仲裁という当事者間の合意を重視する手続と、倒産とい う強行法規的に一律かつ集団的な調整を行う手続とは、相 互に相反するようにも見受けられます。仲裁と倒産の関係につ いては、国際的にも大きな議論があるところですが、以下で は、仲裁条項のある契約につき、海外の契約相手が破産した 場面を想定して、基本的な考え方を概観したいと思います。
第2 仲裁合意は破産管財人を拘束するか
一般的な仲裁条項は、例えば、以下のような条項であり、契 約に関するあらゆる紛争は、合意された仲裁条項に基づき、 合意された仲裁機関(下記の例では、シンガポール国際仲裁 センター)で仲裁により最終解決されます。
私は、当事務所にて事務職員として勤務していますが、前職 は大阪地方裁判所の裁判所書記官として、裁判所での倒産 事務に携わっておりました。現在も当事務所の倒産事件につ き弁護士をサポートしていますので、元書記官の視点から、今 回は、前回に引き続き、債権届出書の記載事項のうち、法人 の代表者の記載方法についてお話いたします。
裁判所に提出する債権届出書には、届出債権者の特定の ため「債権者及び代理人の氏名又は名称及び住所」を記載し て届け出ることとされており(破産規則32条1項1号、民事再生 規則31条1項1号及び会社更生規則36条1項1号)、個人であ れば住所と氏名、法人であれば名称と主たる事務所、商号と 本店などを記載して届け出ることになることは前回お話いたし ましたが、代理人を記載すべき規定は法人の代表者について 準用されることから(破産規則12条、民事再生規則11条、会 社更生規則10条及び民事訴訟規則18条)、届出債権者が法 人の場合は代表者の記載も必要となります。
判決書等の裁判書類における代表者の記載方法としては、 ①代表者である旨②登記上の代表資格(肩書)③代表者の 氏名を記載することが通例とされています。
はじめに
2023年6月30日、金融庁は、有価証券報告書および有価証券届出書ならびに臨時報告書において開示すべき「重要な契約」の類型やその開示内容を具体的に明らかにする「企業内容等の開示に関する内閣府令」等※1 の改正案(以下「本改正案」)を公表しました。
本改正案では、「企業・株主間のガバナンスに関する合意」と「企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意」、そして「ローン契約と社債に付される財務上の特約(財務コベナンツ)」の3類型を対象に、有価証券報告書等の記載事項を改正するとともに、財務コベナンツの付されたローンと社債に関して、新たな臨時報告書の提出事由を加えることが提案されています。
はじめに
「金融かわら版~担保法制の見直しに関する中間試案①~」においては、法制審議会担保法制部会(以下、「担保法制部会」といいます。)の2022年12月6日の第29回会議において取りまとめられた「担保法制の見直しに関する中間試案」(以下、「中間試案」といいます。)の第1章「担保権の効力」及び第2章「担保権の対抗要件及び優劣関係」につき、中間試案とともに公表された担保法制の見直しに関する中間試案の補足説明(以下、「補足説明」といいます。)や、その後に公表された担保法制部会資料等も踏まえて、特に金融実務の観点から重要と思われる点を中心に紹介いたしました。本稿では、それに引き続き、中間試案の第3章「担保権の実行」、第4章「担保権の倒産手続における取扱い」及び第5章「その他」のうち、金融実務及び倒産実務の観点から重要と考えられる項目を紹介します。
個別動産を目的とする新たな規定に係る担保権の実行
スタートアップ(ベンチャー企業)において重要なエクイティ・インセンティブであ るストックオプション(SO)のうち、税制適格 SO の要件の一つとして、1 株当たりの 権利行使価額として、その新株予約権に係る契約(付与(割当)契約)を締結した時に おける発行会社の 1 株当たりの価額に相当する金額(時価)以上であることが必要とさ れています2。この点につき、従前、種類株式(優先株式)を発行しているスタートアッ プが、普通株式を目的とする税制適格 SO を発行する際の普通株式の 1 株当たりの価額 に相当する金額(時価)の算定ルールが明確ではありませんでした。
私は、当事務所にて事務職員として勤務していますが、前職 は大阪地方裁判所の裁判所書記官として、裁判所での倒産 事務に携わっておりました。現在も当事務所の倒産事件につ き弁護士をサポートしていますので、元書記官の視点から、今 回は、債権届出書の記載事項のうち、届出債権者の特定につ いてお話いたします。
倒産手続が開始すると、裁判所から債権者に対して通知が なされるとともに、定められた期間内に、倒産債務者(破産者、 再生債務者または更生会社)に対して有する債権を裁判所 に届け出るよう求められます(ただし、破産手続の場合は、破 産法31条2項の規定により、配当の見込みが立つまで債権届 出を不要とする「留保型」が採用される場合もあります。)。
In brief
1 2023 年 4 月 破産管財人による債務の承認と消滅時効の関係 ―別除権者との交渉過程等での債務承認に 消滅時効の中断の効力を認めた最新判例― 弁護士 関端 広輝/ 弁護士 片山 いずみ Ⅰ.破産手続開始後における被担保債権の回収 1.破産手続における担保権の取扱い(別除権) 破産法上、破産債権(破産法 2 条 5 項。破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請 求権であって、財団債権に該当しないもの。)は、破産手続によらなければ権利行使ができないことが原則とされ ています(同法 100 条、42 条 1 項・同条 2 項)。つまり、破産債権を有する債権者は、基本的には、破産手続 に従って配当を受けることしかできません。しかし、その例外の 1 つとされるのが「別除権」です。 FINANCIAL RESTRUCTURING GROUP NEWSLETTER 破産手続が開始された者の所有財産に担保権が設定されている場合、担保権者は、通常、自身の 有する被担保債権について、当該担保目的物からの回収を試みることになります。 そして、破産手続において破産管財人が選任されていれば、当該担保目的物の処遇や被担保債権 の回収に関し、担保権者が問い合わせや交渉等を行う相手は、当該破産管財人となります。
With the passage of several years since the outbreak of COVID-19 and additional external factors such as the soaring prices of various goods and services and the sharp depreciation of the Japanese yen, companies' financial conditions have deteriorated, while others are considering filing for restructuring proceedings, which is why the reduction of excessive debt has become a major issue as of late.
In an increasing number of restructuring cases of globally-operating companies, companies or funds outside Japan are becoming strong sponsor candidates, and even more foreign players are expected to be actively selected as sponsor candidates in the future.
In this article, we focus on the sponsor selection process in out-of-court restructurings and legal insolvency procedures in Japan, based on recent actual cases.