1.産業競争力強化法等の改正
2021年8月2日、「産業競争力強化法等の一部を改正する 等の法律」の一部が施行されました。
(https://www.meti.go.jp/press/2021/08/20210802001/20 210802001.html:経済産業省のHP参照)
改正内容は多岐にわたりますが、本稿では、中小企業再生 支援協議会(以下「協議会」といいます。)による事業再生支 援の機能強化について、取り上げたいと思います。
2.プレDIPファイナンス及び商取引債権保護規定の 創設(総論)
1 はじめに
産業競争力強化法等の一部を改正する法案が2021年6月9 日に可決成立し、同月16日に公布され一部は公布日に、その 他の部分についても8月2日付で施行されました。
バーチャルオンリー株主総会をはじめとして、多岐にわたる 今回の産業競争力強化法等の改正ですが、本稿では、事業 再生と債権管理に影響のありうる改正点(「債権譲渡の第三 者対抗要件の特例」及び「事業再生の円滑化のための事業 再生ADRに関連する改正」)にフォーカスして説明いたします。 なお、本稿では、ことわりのない限り、改正後の産業競争力強 化法を「法」と略しています。
2 債権譲渡の第三者対抗要件の特例
これまで債権譲渡の第三者対抗要件の具備には、①公証 役場での確定日付の取得や内容証明郵便(民法467条、民 法施行法5条1項2号及び6号)、あるいは②債権譲渡特例法 に基づく債権譲渡登記(債権譲渡特例法4条1項、14条1項) のいずれかの方法による必要があり、実務的には①のうちの 内容証明郵便(電子内容証明を含む)の方法が多く用いられ ています。
第1 はじめに
破産法では、破産債権についての債権者間の公平・平等な 扱いを基本原則とする破産手続の趣旨が没却されることのな いように一定の場合に相殺を禁止する一方で、相殺の担保的 機能に対する合理的な期待が認められる場合にはかかる相 殺禁止を解除することとしています。破産法72条2項2号はこう した相殺の担保的機能に対する合理的な期待を保護するた めの規定の一つであるところ、同規定に関して債権者の相殺 権を制限する旨の判示をした高裁判決(福岡高裁平成30年9 月21日判決(金法2117号62頁)。以下「平成30年福岡高判」と いいます。)を事業再生・債権管理Newsletter2019年8月号 にてご紹介しましたが、近時、平成30年福岡高判を破棄自判 し、「真逆の」結論を示した最高裁判決(最高裁令和2年9月8 日第三小法廷判決(民集74巻6号1643頁)。以下「令和2年最 判」といいます。)が出されました。そこで本稿では、債権者の 相殺権保護の範囲の拡張を示唆する令和2年最判を紹介し た上で(後記第2ないし第4)、令和2年最判が破産債権者に よる相殺権の行使の可否ないし限界の議論に及ぼす影響に ついての若干の考察(後記第5)を行います
第2 事案の概要
マレーシアの2016年会社法(Companies Act 2016)では、会 社の再建手続として、
① スキーム・オブ・アレンジメント(Scheme of Arrangement. 以下「SOA」といいます。)
② 会社任意整理手続(Corporate Voluntary Arrangement. 以下「CVA」といいます。)
③ 更生管財手続(Judicial Management. 以下「JM」といいま す。)
の3つが用意されています。
本稿では、これら3つの再建手続についてご説明いたしま す。
1.スキーム・オブ・アレンジメント (Scheme of Arrangement)
(1) 概要
1 はじめに
破産手続開始申立の多くは、弁護士を代理人としてなされま す。債務者からの依頼を受けて破産手続開始申立の代理人 になる弁護士は、委任契約上、その事務処理につき、委任契 約上求められるレベルをもって履行し、依頼者の利益を実現 する義務を負います。それに加えて、破産手続が、債権者その 他の利害関係人の利害や、債務者と債権者との間の権利関 係を図ることを目的とする手続である(破産法1条)ことから、破 産申立代理人になる弁護士は、依頼者である債務者以外に も多数の債権者や利害関係人の権利関係を適切に調整し、 債務者の財産を適正に処理するという役割を担っており、破 産目的の実現に資するように行動するという公的な責務も同 時に負います(伊藤眞他『条解破産法[第3版]』159頁(弘文 堂、令和2年))。
1 はじめに
新型コロナウイルスの感染拡大が本格化した2020年4月頃 は、メディアなどで、2020年は企業の倒産件数が大幅に増加 するのではないか、という予測が少なからず見受けられました。 もっとも、実際には、企業の倒産、特に民事再生は大きく減少 しました。2020年の倒産動向については民間信用情報機関 等で発表1 されていますが、法的倒産案件の具体的な件数に 触れたものはあまりみかけないように思いますので、何回かに 分けて紹介したく考えています。今回は民事再生編です。
2 民事再生の利用状況
民事再生には、①主に企業の事業再生に活用される「通常 再生」、及び②個人のみが利用可能な「個人再生」の2種類が あります。この2つの手続のこれまでの利用状況は以下のとお りです2 。
3 企業の民事再生(通常再生)
Ⅰ TOPICS
今後のセミナー等の情報
◆AMT グレーターチャイナセミナー
当事務所では、中国メインランド、香港、台湾について、各専門家が各分野のトピックについて解説を行うシリーズ 講座(オンラインセミナー)を開催しております。今後数回の予定は次の通りです。具体的なテーマ及び日程には 変更が生じる可能性がありますので、正確な情報は直近のメールでのご案内をご覧ください。なお、本セミナーは 本ニュースレターの受信を頂いている皆様方を中心にご案内させていただいております。 第 8 回(中国メインランド):2021 年 8 月 26 日(木)14:00 外資企業の中国進出にかかる実務的検討~外商投資法施行後の影響を踏まえて~ 講師:アソシエイト弁護士 尾関 麻帆 上海オフィス顧問 銭 一帆
1 はじめに
日本では高齢化社会を迎え、経営者の高齢化が進む中で、中小企業の円滑な事業承継が喫緊の課題となっています。とりわけ、2020年2月以降のコロナ禍による業績悪化や過剰債務も重なり、事業承継を検討している中小企業の経営者やその関係者は少なくないものと思われます。
本稿では、中小企業が事業承継や事業再生・廃業を行う局面において、「経営者保証ガイドライン」が果たす役割・機能等について、実務上の留意点を踏まえて最新動向を解説します。
2 経営者保証ガイドラインの策定
中小企業では経営への規律付けや信用補完のために経営者保証がされることがあります。もっとも、この経営者保証について、中小企業の円滑な事業承継や、経営が行き詰った際に早期の事業再生や経営者の再チャレンジを阻害するなど様々な課題が指摘されていました。
事業再生・債権管理Newsletter 2021年7月号 2 本ニュースレターの発行元は弁護士法人大江橋法律事務所です。弁護士法人大江橋法律事務所は、1981年に設立された日本の総合法律事務所です。東京、大阪、名古屋、海外は上海にオフィスを構えており、主に企業法務 を中心とした法的サービスを提供しております。本ニュースレターの内容は、一般的な情報提供に止まるものであり、個別具体的なケースに関する法的アドバイスを想定したものではありません。本ニュースレターの内容につきま しては、一切の責任を負わないものとさせて頂きます。法律・裁判例に関する情報及びその対応等については本ニュースレターのみに依拠されるべきでなく、必要に応じて別途弁護士のアドバイスをお受け頂ければと存じます。 建設機械と即時取得 1 考察 建設土木作業に用いられる建機・重機(以下「建設機械」と いう。)には比較的高額のものが多い。資金繰りに窮した建設 機械の使用者が、リース物件や所有権が留保された物件で あるにもかかわらず、資金を得るために、事情を秘匿して建設 機械を第三者に売却することがある。このような場合に、真の 所有者から返還を請求された当該第三者が、建設機械の即 時取得を主張して争う事案が見受けられる。
事業再生・債権管理Newsletter 2021年7月号 8 本ニュースレターの発行元は弁護士法人大江橋法律事務所です。弁護士法人大江橋法律事務所は、1981年に設立された日本の総合法律事務所です。東京、大阪、名古屋、海外は上海にオフィスを構えており、主に企業法務 を中心とした法的サービスを提供しております。本ニュースレターの内容は、一般的な情報提供に止まるものであり、個別具体的なケースに関する法的アドバイスを想定したものではありません。本ニュースレターの内容につきま しては、一切の責任を負わないものとさせて頂きます。法律・裁判例に関する情報及びその対応等については本ニュースレターのみに依拠されるべきでなく、必要に応じて別途弁護士のアドバイスをお受け頂ければと存じます。 新型コロナウイルス感染症と個人債務の整理手続 -自然災害ガイドラインの新型コロナウイルス特則をご存知ですか- 1 新型コロナウイルスの影響を受けた個人の債務整 理の新たな手法 新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的な感染拡大は、 ワクチンの接種開始により改善が期待されるものの、いまなお 収束を見ていません。