第1 はじめに

経済的に困窮した取引先から債権(本稿では担保のない 一般債権であることを前提に論述します。)を回収し、その後 に取引先が破産に至った場合、その債権回収行為が破産管 財人から否認され、回収金を破産管財人に返還しなければ ならないことがあります。

この否認(講学上偏頗行為否認と称されます。)について破 産法は、次のような定めを置いています(下線は筆者)。

(特定の債権者に対する担保の供与等の否認)

第162条 次に掲げる行為(既存の債務についてされた担保 の供与又は債務の消滅に関する行為に限る。)は、破産手続 開始後、破産財団のために否認することができる。

一 破産者が支払不能になった後又は破産手続開始の申立 てがあった後にした行為。ただし、債権者が、その行為の当 時、次のイ又はロに掲げる区分に応じ、それぞれ当該イ又はロ に定める事実を知っていた場合に限る。

イ 当該行為が支払不能になった後にされたものである場合 支払不能であったこと又は支払の停止があったこと。

ロ 当該行為が破産手続開始の申立てがあった後にされたも のである場合 破産手続開始の申立てがあったこと。

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Hajime Ueno, Masaru Shibahara and Hiroki Nakamura, Nishimura & Asahi

This is an extract from the 2023 edition of GRR's The Asia-Pacific Restructuring Review. The whole publication is available here.

In summary

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Cryptoassets & Insolvency: Legal, Regulatory and Practical Considerations Shearman & Sterling 21 July 2022 Part I: Introduction and Background Introduction Cryptoassets have emerged from relative obscurity to become an increasingly significant and mainstream presence: in just five years the global market cap for cryptocurrencies rose from around $15bn to over $3tn at its peak in November of last year. This has fueled a prolific expansion of cryptofocussed businesses (e.g.

私は、当事務所にて事務職員として勤務していますが、前職 は大阪地方裁判所の裁判所書記官として、裁判所での倒産 事務に携わっておりました。現在も当事務所の倒産事件につ き弁護士をサポートしていますので、元書記官の視点から、今 回は「別除権」と「更生担保権」という倒産手続上の担保権に 関する用語についてお話いたします。

破産手続や再生手続においては、特別の先取特権、質権、 抵当権または商事留置権等の担保権は、倒産手続によらな いで権利を行使できるとされており、この権利のことを「別除 権」と定義しています(破産法2条9項、同65条1項、民事再生 法53条)。つまり、「別除権」とは、これら担保権が本来有する 権能、ほぼ担保権そのもののことを指しているといえます。

ところが、裁判所や弁護士が「別除権」という用語を用いる 場合は、かならずしも「担保権」の意味だけにとどまらず、「別 除権付き(破産または再生)債権」の趣旨で用いることも多く、 実務上はある程度定着した表現となっています。

よって、裁判所や弁護士とやり取りをする中で、「別除権」とい う用語が用いられている場合は、「別除権付き(破産または再 生)債権」の趣旨で用いられている可能性も念頭に置いておく と、すっきりとした理解につながる場合が多いと思われます。

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1 はじめに

令和4年3月4日、中小企業の事業再生等に関する研究会 より「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」(以下「中 小企業版私的整理ガイドライン」といいます。)が公表されま した。本ガイドラインは、経済産業省、金融庁及び財務省から 発表された「中小企業活性化パッケージ」のうち、中小企業 の事業再生等のためのガイドラインを定めるもので、とりわ け、第三部については、中小企業の事業再生等に焦点を当 てた新たな準則型私的整理手続を選択肢として提供するも のであり、実務的に注目されています。

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Japan Inc has embarked upon the overdue process of unbundling its conglomerate structures. Businesses that are being put up for sale include distressed oversees operations, particularly in the automotive sector. Managing the businesses while they are in distress, preparing them for sale, and eventually selling them, comes with a variety of legal and practical complications. The legal landscape will vary by jurisdiction, but the following aspects generally need to be considered in some shape or form regardless of the applicable law.

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近時の医療法人を取り巻く環境は厳しいものといえます。診療報酬のマイナス改定や診療報酬に 転嫁することのできない消費税の増税、医療法改正による監査制度の変更に伴う監査コスト増など 従来からの要因に加え、新型コロナウィルス拡大による影響(感染症対策のコスト増、診療時間の制 約・新規外来患者の受付停止に伴う収入減等)が決定打となり窮境に陥る医療法人も少なくありま せん。医療法人が経営破綻に陥ったり、廃業することになると、当該医療法人や債権者は勿論、通 院・入院する患者に大きな不利益が及んでしまい、地域医療の重要な担い手を失うことにも繋がり かねません。したがって経営難に陥った医療法人を再建することは社会的なニーズも強く、昨今の 外部環境の厳しさに応じて今後も医療法人の再建を図る事案が増えていくものと予想されます。 こうした状況を受け、本ニュースレターでは医療法人の経営再建及びその主要な手法の 1 つで ある M&A につき、医療法人特有の事情に焦点を当てながらその留意点について解説するとともに、 各再建手続及び再建計画策定時の留意点についても解説していきます。

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第1 はじめに

事業再生型の民事再生手続において、再生手続実施者と 再生債権者との再生計画案の賛成議決権行使の合意に向 けた活動が行われます。特に、従前の取引先との関係を維 持しながら、再生債務者の事業を立て直す方法による再建 計画の場合には、再生計画案の認可確定がなければ、全て の事業再生計画が頓挫してしまいます。その意味では、再生 手続実施者にとっては、再生計画案の賛成議決権行使の合 意に向けた行動は、これを否定すべきものではなく、再生債 務者の事業再生を現実に実現するために必要不可欠である 場合もあります。このことは、DIP型であるか管理型を問わ ず、大変重要な問題となります。

第2 再生手続における「賛成議決権行使和解契 約」についての問題提起

この問題をテーマとして扱う理由は、「賛成議決権行使和 解」の意味が注目されるに至ったことによります。この契機と なったのが最高裁令和3年12月22日決定〔本決定〕です。本 決定の内容と意義については、秋田弁護士が2022年4月の Newsletter(下記のURL)で報告〔以下、〔秋田報告〕といいま す〕しています。

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1 仙台高裁令和2年10月13日決定のご紹介(破産手 続開始申立てが不当な目的によるものとして棄却され た事例)

(1) 当事者・本件抗告

相手方Y(債務者)は平成23年11月頃から勤務医師として働 いており、抗告人Xは令和元年9月26日にYと離婚した元妻で す。Yは、令和2年2月に支払を停止し、令和2年6月2日に本件 の破産手続開始の申立てを行いました。原審(福島地方裁判 所相馬支部)が、令和2年7月27日、Yについて破産手続を開 始する旨の決定(原決定)をしたのに対し、Xは、原決定を不服 として、原決定の取消し及びYの破産手続開始の申立ての棄 却を求めて即時抗告(本件抗告)しました。

Xは、離婚に伴う財産分与として、現住所のマンションの所有 権をYから譲り受けたところ、同マンションには住宅ローンの抵 当権が設定されており、財産分与後もYが債務者として同ロー ンの支払を継続することが離婚協議書により合意されていま した。もっとも、Yが破産すると、マンションに設定された抵当権 が実行され、XはYに対し、上記合意の債務不履行に基づく 損害賠償請求権(破産債権)を有することとなります。

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第1 はじめに

強制執行とは、主に、民事裁判で確定された権利を実現す るため、民事執行法に基づく手続のことです。強制執行といっ ても、債権者が有する権利の内容に応じて、様々な方法が用 意されており、大別すると、金銭の支払を目的とする権利のた めの手続(金銭執行)と、金銭の支払を目的としない権利のた めの手続(非金銭執行)に分けることができます。金銭の支払 を目的とする権利としては、例えば、貸金返還請求権がありま すが、交通事故でケガをしたとして、加害者に治療費などを求 める損害賠償請求権も、これに該当します。他方で、金銭の支 払を目的としない権利としては、例えば、契約に基づき家具の 製造を求める権利などがあり得ます

企業法務では、一般に、金銭の支払を求める権利の実現 (債権回収)が問題となるため、本稿では、強制執行のうち、金 銭執行に焦点を当てて、簡単な解説をさせていただきます。

第2 金銭執行の準備

1 債務名義と執行文

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