1  はじめに

令和3年10月、内閣に新しい資本主義実現本部(以下「実現本部」)が設置され、その具体化を進めるために、新しい資 本主義実現会議(以下「実現会議」)が開催されました。同年1

1月には実現会議から「緊急提言( 案)」が公表され、また、令和4年6月には実現本部から「新しい資本主義のグランドデザ イン及び実行計画(案)」やその工程表等が公表されました。

その中で、多数決による私的整理手続が検討されており、令和4年10月には、「新たな事業再構築のための法制度の方向性(案)」1が公表されました。

今回は、この「新たな事業再構築のための法制度の方向性

( 案)」の概要と、このような検討がなされた背景(現状の私的整理手続の課題)についてご紹介いたします。

2  現状の私的整理手続とその課題(全員同意)

私的整理手続は、窮境にある事業者が、主に金融機関からの借入金債務を対象として、支払時期の繰延べ(以下「リスケジュール」)又は債権放棄を求める内容を含む事業再生計 画案を立案して対象債権者に提示し、全対象債権者の同意を得て、事業再生計画案に沿って再建を図る手続です。

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1  はじめに

破産手続の開始後も,破産者が自由財産から保険料支払    を継続し,契約更新を行ったとしても,その後に発生した共 済事故に係る共済金請求権は破産財団に帰属する(破産者 には帰属しない)と判断した東京高等裁判所の判決を紹介し  ます。

2 事案概要

破産者は,破産手続開始決定前に自己所有建物等を目的 とする火災共済契約(「本件共済契約」)を締結し,破産手続 開始後も共済掛金の支払を継続し,本件共済契約は自動更 新されていました。破産手続開始決定・自動更新後,保険事故(「本件火災」)が発生しました。共済連合会は,債権者不確知を供託原因として,本件火災に係る共済金を供託しました

(「本件供託」)。破産管財人は,本件火災に係る共済金請求 権(「本件共済金請求権」)が破産財団に帰属するとして,本件供託に係る供託金請求権を破産管財人が有することの確認を求めました。他方,破産者は,本件共済金請求権は破産者の新得財産であるとして,共済連合会に対し共済金の支払を求めました。時系列は以下のとおりです。

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1  はじめに

ファクタリングという言葉を聞かれたことがあると思います。ただ,ファクタリングと一口に言っても,複数の形式があり,主  として売掛債権の資金化のために行うもの(債権の売買)と,   貸倒れリスクを軽減するためファクタリング会社が債務保証を する保証形式のものとがあり,前者は担保付きの資金融資

(すなわち,売掛債権を譲渡担保とした金銭消費貸借契約)  と接近する側面があります。

そこで,法的には,債権の売買となるのか,担保付きの資金 融資なのかは重要な問題となります。また,ファクタリングは, 法的倒産手続との関係でも様々な論点が出てきます。本稿では,ある裁判例を題材に,ファクタリングと倒産手続につい  て検討してみたいと思います。

2 裁判例について 

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FTX Trading Ltd. ("FTX") and its affiliates (collectively, "FTX Group"), which operated one of the largest crypto-asset exchanges in the world through the FTX.com platform, filed for Chapter 11 in the United States on November 11 last year.

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Background

The bankruptcy of FTX Trading, a major U.S. crypto assets exchange, is bringing to light the pitfalls of global bankruptcy. The reason for this is that FTX Japan, a Japanese subsidiary of FTX Trading, also filed for Chapter 11 bankruptcy protection in the U.S. This differs from the bankruptcy of Lehman Brothers Group given the Japanese subsidiary of FTX Trading did not file for bankruptcy in Japan due to a significant excess of assets.

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第1 はじめに 

令和4年3月4日付けで、経済産業省は金融庁・財務省ととも に「中小企業活性化パッケージ」を策定・公表し、同パッケージに 基づき、同年4月1日より、中小企業再生支援協議会と経営改 善支援センターを統合し、中小企業の収益力改善・事業再生・ 再チャレンジを一元的に支援する「中小企業活性化協議会」を 設置しました。

これは、日本の企業数の99.7%、雇用の7割を占める中小企 業について、コロナ禍の長期化等により増大する債務に苦しむ 状態が長く続いているという現状を踏まえ、事業者のフェーズ (収益力改善フェーズ・事業再生フェーズ・再チャレンジフェーズ)に応じたきめ細やかな支援を措置するとともに、描くフェーズを 一元的に支援する支援体制を構築することを目的とするものです。

中小企業活性化協議会が行っている再生支援は①窓口相 談と、②具体的な再生支援とに大きく分かれます。②具体的な 再生支援は下図のとおりです。本稿では、①窓口相談、②具体 的な再生支援のうち中小企業活性化協議会自身による支援の 概要についてご説明いたします注)1

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1. はじめに

2022 年 11 月 25 日、株式会社SMBC キャピタル・パートナーズが、本邦最大の鶏卵業者で会社更生手続下にあるイセ食品株式会社の事業支援スポンサーとなることが発表された 。同月 30 日には、裁判所により、同スポンサーの代表者がイセ食品株式会社の事業家管財人に選任され 、本邦最大鶏卵業者の事業再生のための大きな一歩が踏み出されることとなった。

近年の会社更生手続においては、裁判所の監督の下、更生会社の事業支援スポンサーが選定されることは一般的な運用ともいいうるが、本件の会社更生手続は、イセ食品株式会社が自ら会社更生手続開始を申し立てたものではなく、一部の株主及び債   権者による申立てにより開始されたという特異な経過を辿っている。

以下では、申立て債権者のイニシアティブにより、債務者事業を維持し、再生につなげる手法の実例として、本件の経緯を概観することとする。

2.イセ食品グループの会社更生

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The high-profile Chapter 11 case of the FTX Trading group involves its Japanese affiliates including FTX Japan, which operated a registered cryptocurrency exchange in Japan and has been ordered by the Financial Services Agency of Japan to suspend its business upon the filing for Chapter 11. Recently, a motion was made for entry of orders approving, among other things, the group to sell FTX Japan's business through so-called “363 sale”.

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Restructuring & Insolvency Newsletter

December 2022 (Vol.1)

The first case in Japanese history where the debtor used simplified rehabilitation proceedings as a tool to "cram down"

minority lenders

I. Introduction II. Overview of the procedures used

- Turnaround ADR and simplified rehabilitation proceedings

III. Marelli case IV. Expected future developments

Mori Hamada & Matsumoto

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1 東京地裁「倒産部」に(2022年4月

東京地裁では、2022年3月まで、長年にわたり、破産・民事 再生は民事20部(破産再生部)、会社2 ビジネス・コート(2022年10月)更生は民事8部(商事 部)によって事件処理がなされてきましたが、同年 4月より、会 社更生、特別清算及び外国倒産処理手続承認援助事件等 が民事8部から民事20部に移管され、民事20部の名称も「破 産再生部」から「倒産部」に変更1 されました2

民事再生と会社更生はともに再建型の倒産手続であり、手 続が類似しているところもあることから、会社更生が民事20部 に移管されたことに伴い、従前の会社更生の実務運用が変わ ることも考えられるものの、民事20部としては、当面は民事8部 の運用を承継しつつ、破産・再生事件の運用状況も踏まえ て、利用者が利用しやすい、公正・適正性を担保した円滑な 手続運用を継続的に検討していく3 、とされていることから、当 面は運用が大きく変わることはないと思われます。

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