1 はじめに

危機時期にある会社が、その事業の全部または一部を別 の法人に移して、事業の存続を図るという手法は、第二会社 方式など呼ばれ、事業再生の手法の一つとして知られるとこ ろです。当然ながら、このような危機時期における事業承継 は債権者を害するものではあってはならず、不当な事業承継 がなされた場合には、後の破産手続において当該事業承継 が否認されたり、いわゆる法人格否認の法理により旧会社の 債権者から新会社に対する請求が認められたりする可能性 があります。本稿では、破産の危機にあった旧会社の貸金返 還債務について、法人格否認の法理を適用し、新会社の支 払義務を認めた東京地方裁判所・令和3年2月12日判決(金 融法務事情2168号・72頁)をご紹介したうえで、危機時期に ある会社による事業承継についての留意点を検討したいと思 います。

2 東京地方裁判所・令和3年2月12日判決

(1) 事案の概要

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第1 はじめに

事業再構築補助金の第4回公募が開始されました。本補助 金は、新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、又は事 業再編という思い切った事業再構築に意欲を有する中小企 業等の挑戦を支援するものであり、通常枠では8000万円を上 限として、企業の投資金額の最大2/3を補助するものです。

現時点で予定されているのは、公募を開始したばかりの第4 回公募及び来年初旬に予定されている第5回公募のみであ り、また、回を重ねる毎に申請数も増加しているため、機会を 逃さないよう、制度の概要を紹介いたします。

第2 専用サイト 

事業再構築補助金については、中小企業庁が専用サイトを 公開しています(https://jigyou-saikouchiku.go.jp/#c1)。制 度説明、採択事例紹介、申請手続等が網羅されていますの で、御参照ください。

第3 概要

事業再構築補助金制度の概要は以下のとおりです。

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第1 はじめに

御存じのとおり、債権者は、確定判決等の債務名義を取得し た後、債務者に対して、債務者が第三者に対して有する債権 を差し押えることができます。もっとも、債務者が第三者に対し て有する債権のうち、一部の債権についてはこれを差し押さ えることが禁止されています。どのような場合に、差押えが禁 止されているか事前に理解しておくことで、有事の際に適切な 判断・対応が可能となります。

そこで、本稿では、自然災害義援金に係る差押禁止に関する 法律が制定・施行されたことを受け、その概要・背景等をご紹 介させていただきます。

第2 差押禁止債権の制度

1 差押禁止債権とは

債権執行手続においては、債務者及びその家族の生活保 障等の社会政策的配慮その他の目的から差押えが禁止され る債権があります。これを差押禁止債権といい、大きく分ける と、①民事執行法上差押えが禁止されている債権(給料債権 など。民事執行法第152条)、②特別法上差押えが禁止されて いる債権、③権利の性質上差押えができない債権に分類す ることができます1 。

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8月号(民事再生)、9月号(破産)と法的手続の話が続きまし たが、3回目の今月号は、近時の私的整理(協議会手続・事業 再生ADR)の動向を紹介したいと思います。

1 協議会の再生手続の利用状況

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1 倒産手続の債権者申立て

債務超過や支払不能等の要件がある場合、債権者が主体と なって、債務者につき倒産・再生手続(破産、民事再生、会社 更生)の申立てをすることができます(債権者申立て一般につ いては、村上寛「倒産手続の債権者申立て」(2019年9月号)に て概説しておりますので、そちらをご参照ください。)。

債権者が債務者の破産申立てを行う事例はそこまで一般的 ではありませんが、それでも、債務の弁済に非協力的である一 方、財産隠匿や偏頗行為、放漫経営等による財産の減少が 疑われる事例は枚挙に暇がないところです。

そこで今回は、債務者が、自らに対する債権の弁済に非協力 的である一方で、既に、金品の持ち出し、預金の解約、不動産 の第三者への廉価売却、役員報酬の増額と回収等の財産隠 匿行為、あるいは全債権を支払うことのできない状態にあるの に、特定の債権者に対してだけ偏った弁済をする等の偏頗行 為が進行してしまい、弁済の対象となるべき財産(責任財産) の会社からの流出が起こってしまっているときに、債権者として 採りうる手段の一つとして、破産法上の保全管理命令を紹介 したいと思います。

2 保全管理命令について

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Corporate restructuring transactions are often motivated by tax planning, though there are usually other legitimate corporate needs to be achieved. The Corporations Tax Code of Japan contains provisions granting the government power to deny the effects of corporate restructuring for tax purposes—e.g., Article 132 (for family company group transactions) and Article 132-2 (for intra-group mergers and other reorganizations). In recent years, Japanese courts have been trying to clarify the standard for denying the tax effect of certain restructuring transactions.

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Hajime Ueno, Masaru Shibahara and Hiroki Nakamura, Nishimura & Asahi

This is an extract from the 2022 edition of GRR's the Asia-Pacific Restructuring Review. The whole publication is available here.

In summary

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はじめに

ケイマン諸島と香港の裁判所は、この数ヶ月、ケイマン諸島の会社を再編することを目的とするクロスボーダーの申立てについて、関連する法域における裁判所がどのようにこれを処理するのか実用的な方向性を示しました。これは、国際礼譲および修正された普遍主義の原則に沿ったものです。

裁判所のスタート地点

手続が一つ以上のコモンローの法域で開始されたが、清算人の任命が未了の場合、裁判所が修正された普遍主義を適用するためのスタート地点は、倒産の主手続の役割を担うのはどの法域がより適当かということを考えることでしょう。最近の香港およびケイマン諸島の両地域の裁判例では、長年の先例に沿いながら、通常この法域とは会社の設立地であることを確認しました。なぜならば投資家やサービス・プロバイダーおよび債権者が通常関係しているからであり、とりわけ、会社の登録された営業所であったり、その取締役会の義務やその定款を規定する法律の地であるからです。

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1.産業競争力強化法等の改正

2021年8月2日、「産業競争力強化法等の一部を改正する 等の法律」の一部が施行されました。

(https://www.meti.go.jp/press/2021/08/20210802001/20 210802001.html:経済産業省のHP参照)

改正内容は多岐にわたりますが、本稿では、中小企業再生 支援協議会(以下「協議会」といいます。)による事業再生支 援の機能強化について、取り上げたいと思います。

2.プレDIPファイナンス及び商取引債権保護規定の 創設(総論)

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8月号に続いて、コロナ禍での法的倒産案件数の動向を紹 介します。今回は破産編です。

1 破産手続の利用状況

(1) 2020年

2020年に裁判所が受け付けた破産事件の数は全国で 78,104件(2019年比2 .6%減)、東京(本庁)で8,807件(2019 年比8 .0%減)となっています。東京の8,807件の内訳は法人 破産1,438件、個人破産7,369件であり、いずれも2019年比で 減少となりました1 。東京地裁(本庁)の2016年から2019年の破 産事件数は年間9,000件台中盤から後半で推移していました ので、2020年の8,807件は大きな減少といえます。減少の要因 としては、コロナ禍による影響緩和のための各種公的給付や 金融機関による資金繰り支援の浸透等が考えられます。

(2) 2021年1月から8月の動向(速報値)

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