はじめに
1. はじめに
2025年1月、企業倒産手続の簡易版プログラム(Simplified Insolvency Programme。「SIP」)の改正に関するシンガポール倒産・再生・解散法改正法案(Insolvency, Restructuring and Dissolution (Amendment) Bill)が可決されたため、本稿では改正内容を概観する。
2. 企業倒産手続の簡易版プログラム(SIP)とは
SIPは、パンデミック期間中であった2021年1月に、財政難に直面した中小・零細企業(micro and small companies/MSCs)の破綻処理を支援するために、暫定措置として導入されたものである。これは、会社再建のための債務整理や会社の効率的な清算のために、迅速かつ費用対効果の高い簡略化された手続を提供することを目的としたものであり、概要以下の2つに分類される。
はじめに
はじめに
本来は非適格組織再編であるものを形式的に適格組織再編の要件を充足させ適格組織再編とするなどの手法で租税回避が行われた場合、税務当局により「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」(法人税法132条の2)として更正処分が打たれ、その課税関係を否認(否定)されることがあります(同条を組織再編成に関する行為計算否認規定といいます。)。このような代表的な事例としては、ヤフー事件(最高裁平成28年2月29日第一小法廷判決)、TPR事件(東京地裁令和元年6月27日判決、東京高裁令和元年12月11日判決)が挙げられ、これらはいずれも繰越欠損金の引継ぎが否定された事案です。本稿で紹介するPGM事件(東京地裁令和6年9月27日判決)もグループ会社間の合併による繰越欠損金の引継ぎが問題となった事案ですが、行為計算否認規定を適用してなされた更正処分が初めて裁判所によって取り消された事案として注目に値します※1。
事案の概要
I. Introduction
はじめに
2023年12月22日、金融庁は、有価証券報告書および有価証券届出書ならびに臨時報告書において開示すべき「重要な契約」の類型やその開示内容を具体的に明らかにする「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正(以下「本改正」)を公表しました。本改正は同日付で公布されており、2024年4月1日から施行されます。重要な契約の開示に関する改正規定は2025年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等、同年4月1日以後に提出される臨時報告書から適用されます。
本改正の公布と同時に、意見募集に対して寄せられたコメントの概要とこれに対する金融庁の考え方(以下「考え方」)も同時に公表されており、本改正に関する金融庁の見解を理解する上で参考となります。
はじめに
コロナ禍によって事業や財政状態が毀損した企業の再生が課題となる近時、実質的に債務超過状態にある上場会社をスポンサーが完全子会社化する(つまり既存株主の保有する株式を全てスポンサーが取得する)ことで、その経営再建を図る事例が増加しつつある。
こうした事例では、事業再生ADR手続等の準則型私的整理手続を通じた金融債権者(金融機関)を対象とする債務リストラクチャリング(債務免除による金融支援)によって過剰債務を解消するとともに、スポンサー支援を通じて資本を拡充し手元資金を確保した上で、対象会社の上場を廃止してスポンサーの完全子会社となり抜本的な再建プロセスが講じられることになる。
1. 本決定の概要
本件は、当事務所が代理し、民事再生法に基づく再生手続が東京地方裁判所に係属している再生債務者が中国の上海市に相応の資産を有していたことから、同資産の保全を図るべく、中国の裁判所(上海市第三中級人民法院)に対して、東京地方裁判所による再生手続開始決定及び監督命令を承認するよう申し立てた事案です。上海市第三中級人民法院は、弁論期日を開催して関連当事者の意見を聴取し、中国国内の知れたる債権者に対して異議申立機会を提供し、かつ、中国国内で公告を行った上で、2023年9月26日に、再生手続開始決定及び監督命令を承認する旨、ただし、債権者の利益に重大な影響を及ぼす再生債務者の中国国内における財産処分行為については別途人民法院による許可を要する旨の決定(以下「本決定」といいます。)を下しました。
はじめに
2023年6月30日、金融庁は、有価証券報告書および有価証券届出書ならびに臨時報告書において開示すべき「重要な契約」の類型やその開示内容を具体的に明らかにする「企業内容等の開示に関する内閣府令」等※1 の改正案(以下「本改正案」)を公表しました。
本改正案では、「企業・株主間のガバナンスに関する合意」と「企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意」、そして「ローン契約と社債に付される財務上の特約(財務コベナンツ)」の3類型を対象に、有価証券報告書等の記載事項を改正するとともに、財務コベナンツの付されたローンと社債に関して、新たな臨時報告書の提出事由を加えることが提案されています。
はじめに
「金融かわら版~担保法制の見直しに関する中間試案①~」においては、法制審議会担保法制部会(以下、「担保法制部会」といいます。)の2022年12月6日の第29回会議において取りまとめられた「担保法制の見直しに関する中間試案」(以下、「中間試案」といいます。)の第1章「担保権の効力」及び第2章「担保権の対抗要件及び優劣関係」につき、中間試案とともに公表された担保法制の見直しに関する中間試案の補足説明(以下、「補足説明」といいます。)や、その後に公表された担保法制部会資料等も踏まえて、特に金融実務の観点から重要と思われる点を中心に紹介いたしました。本稿では、それに引き続き、中間試案の第3章「担保権の実行」、第4章「担保権の倒産手続における取扱い」及び第5章「その他」のうち、金融実務及び倒産実務の観点から重要と考えられる項目を紹介します。
個別動産を目的とする新たな規定に係る担保権の実行