1.はじめに
保険契約は、何十年間、場合によっては終身期間の契約と なっているものもあります。保険事業者(保険会社を含みます。 以下同様です。)は、契約者保護の観点から、法令により、財 務の健全性を保つことが義務付けられていますが、それでも なお、長期の契約期間中に経済が大きく変動し、経営状態の 良かった保険事業者でも倒産する可能性があります。
1990年代から2000年代にかけて、保険会社の倒産事例が いくつか発生した後は、日本において保険事業者が倒産する ことはしばらくありませんでしたが、2020年に東京地方裁判所 で保険事業者の民事再生の事案が発生しており、今後も保険 事業者の倒産事案が発生する可能性があります。
以下では、保険事業者が倒産した場合を中心に、倒産手続 における保険契約1 の取扱いを解説いたします。
2.保険事業者が倒産した場合
(1) 各倒産手続での共通事項
1 はじめに
既に本ニュースレターでご説明のとおり、会社法が想定して いる会社の清算の原則的形態は、いわゆる通常清算手続 (会社法475条以下)です1 。また、会社が債務超過等に陥っ ていて、通常清算手続を行うことができない場合の特別規定 として、特別清算手続(会社法510条以下)や破産手続が定 められています2 。通常清算手続、特別清算手続及び破産手 続は、清算型手続と言われています。
このように、会社の清算にあたっては、通常清算手続、特別 清算手続又は破産手続を選択することが一般的ですが、本 来「再生型」の手続と言われる民事再生手続や会社更生手 続を利用して、会社の清算を行うことも可能です。
以下では、どのように民事再生手続や会社更生手続を使っ て会社の清算を行うことができるのか、簡単にご説明させて いただきます。
2 清算型再生計画について
民事再生法において、会社を清算することを内容とする「清 算型」の再生計画に関する特段の規定はありません。